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'''レインコート'''(英:Raincoat)とは、[[雨|雨天]]時に着る[[外套|コート]]。
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'''レインコート'''({{lang-en-short|raincoat}})とは、耐水性あるいは防水性のある素材でつくられた、主に[[雨|雨天]]時に着る[[外套]]。'''[[合羽]]'''(かっぱ)、'''雨合羽'''(あまがっぱ)ともいう。
  
[[1823年]][[スコットランド]]の化学者であるチャールズ・マッキントッシュが[[ゴム]]を使った防水布を発明した。この布を使ったレインコートが[[ロンドン]]で流行した。
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丈の短いものは'''レインジャケット'''({{lang-en-short|rain jacket}})、[[トップス (衣服)|トップス]][[ボトムス]]のセットは'''[[レインウェア]]'''と呼ばれる。
  
[[1830年]]ごろ、[[トーマス・バーバリー]]が防水コート「バーバリー」を売り出した。これは、[[第一次世界大戦]]でイギリス空軍に採用された。
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== 歴史 ==
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[[1823年]][[スコットランド]]の化学者である[[チャールズ・マッキントッシュ]]が[[ゴム]]を使った防水布を発明。この布を使ったレインコートが[[ロンドン]]で流行した。
  
最近ではアウトドアなどで着る[[レインウェア]](レインスーツ)が多く出回っている。上下組みになっている。アウトドア用は「[[ゴアテックス]]」などのハイテク新素材が使われ、汗をかいても蒸れにくいようになっている。
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[[1879年]][[トーマス・バーバリー]]が[[ギャバジン (織物)|ギャバジン]]を開発。
  
これから転じて、[[テレビ]]・[[ラジオ]]のスポーツ中継などにおいて、悪天候のため試合が中止になった場合などに代わりに放送される「[[雨傘番組]]」の通称として用いられることもある。
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== 素材 ==
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[[日本産業規格]](JIS)では耐水圧2,000mm以上で'''防水生地'''として扱われるが、衣服に使う場合はこれでは不十分なことが多い。例えば濡れた凹凸のある地面に座った場合、凸部分の水滴は、それ以上の圧力で衣服に押しつけられる可能性がある。そのため衣服に使用する防水生地の場合は耐水圧8,000mm以上が目安とされる<ref name="qanda-q25">『山の道具Q&A』pp.66-67。</ref>。また生地が防水であっても縫い目が目止めされていないと、そこから浸水する<ref name="qanda-q25"/>。
  
ただし、(特に女児が)着衣して写真を投稿したりすると、[[勇者プクリン]]が大興奮するので注意。
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レインコートに使われる古典的な素材として、[[ゴム引き]]、{{仮リンク|ワックスドコットン|en|Waxed cotton}}、[[ポリ塩化ビニル]]などがある。これらの素材で作られたレインコートは、水を通さないと同時に身体から出た[[水蒸気]]も通さない。そのため長時間着用していると、レインコート内部の行き場を失った水蒸気が冷やされ、水に戻り、[[インナーウェア]]が濡れることになる。
  
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その他の古典的な素材に[[ギャバジン (織物)|ギャバジン]]があるが、これは厳密には防水生地ではないため、それなりの水圧がかかると浸水する。
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近年では「[[ゴアテックス]]」などの防水透湿性素材が使われる<ref>1976年にアメリカの Early Winters 社のテントに採用されて以降、主にアウトドア用品、特にレインウェアなどを中心に多く採用されている。(1977年6月21日発行 Backpacker VOL.5 No.3)など</ref>。防水透湿とは水は通さず水蒸気は通すという意味で、その素材を大別すると無孔質と多孔質に分けられる。多孔質は水(100µm程度)は通れないが水蒸気(0.0004µm程度)は通れる極小の穴の空いた構造になっている。無孔質は[[親水性]]のあるポリマーが水蒸気と結合・分離する作用を利用して移動させる。それぞれ単体でも機能するが、両方を組み合わせたものもある。
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== ハードシェルジャケットとソフトシェルジャケット ==
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防水性のある衣服に'''ハードシェルジャケット'''({{lang-en-short|hard shell jacket}})がある。レインジャケットと似ているが、登山などのアウトドアスポーツにおいては、突然の雨など天候の変化で脱着するものはレインジャケット、天候に拘らず常時着用するものはハードシェルジャケットとして区別される傾向がある。
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既存の防水生地は伸縮性を持たせるのが難しいなどの制約が多く、あまり高い柔軟性や透湿性も望めないため、衣服の素材としては使い勝手がよくなかった。そこで防水ではなく耐水に割り切って、より衣服に向いた素材を使って作られたものが'''ソフトシェルジャケット'''({{lang-en-short|soft shell jacket}})である。[[ウインドブレーカー]]などはソフトシェルジャケットに分類される。
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== 題材とした作品など ==
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鮮やかな色で光沢の強いレインコートは、視覚的に観客に強い印象を残す効果を目的として、洋画では小道具(衣装)として使われることが多い<ref>[[澁澤龍彦]]「スクリーンの夢魔」現代映画論 (1978年、河出書房新社)</ref>。主人公の個性・キャラクターを特徴付け、視聴者へのインパクトを期待して用いられるケースがあり、「[[刑事コロンボ]]」などは、その成功例ともいえる<ref>「刑事コロンボ : レインコートの中のすべて」マーク・ダウィッドジアク 著 岩井田雅行、あずまゆか 訳(1999年、角川書店)</ref>。児童書では「ちいさいモモちゃん」「ワニくんのレインコート」シリーズなど、教育・知育の絵本で題材に取り上げられる場合がある。ミステリでは、重要人物のキーアイテムになる作品が書かれている<ref> Dean R. Koontz (著)、大出 健 (翻訳) 「ベストセラー小説の書き方」 (1978年、河出書房新社)</ref>。
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*[[:en:Marlène Jobert|マルレーヌ・ジョベール]] 『雨の訪問者』<ref>「雨の訪問者(1970年1月21日公開)」。原作・脚本はミステリ作家の[[セバスチアン・ジャプリゾ]]。</ref> - ヒロインが白エナメルのレインコート・レインハット・長靴の3点セットで登場。晴れのシーンでも多く着用。白い雨具は女主人公の「清楚」さを暗示<ref>「[[キネマ旬報]]」1970年5月24日「Le Passager de la pluie」1970</ref>。
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*[[ソフィア・ローレン]] 『[[アラベスク (映画)]] 』<ref>「[[アラベスク (映画)]]( 1966年5月5日公開)」。クロード・ルルーシュ監督のミステリ映画。</ref> - ヒロインが赤エナメルのレインコートを着用。スチール写真も多数現存。
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*[[カトリーヌ・ドヌーブ]] 『[[昼顔 (1967年の映画)|昼顔]]』<ref>「昼顔(1967年5月24日公開)」。監督はルイス・ブニュエル、 原作ジョゼフ・ケッセル。</ref> - ドヌーブ演じるヒロインが黒エナメルのレインコートをロシア風の毛皮の帽子と合わせて着用。ドヌーブ作品では他に「シェルブールの雨傘」など。
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*[[ソフィー・マルソー]] 『[[ラ・ブーム2]]』(La Boum 2)<ref>「[[ラ・ブーム2]]( 1982年12月公開)」。クロード・ピノトー監督の青春恋愛映画 。</ref> - 作中劇「雨に唄えば」にマルソーが黄色いレインコート姿で出演。オリジナルの「雨に歌えば」のレインコートは舞台でも多用。
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*ダリル・ハンナ(レプリカント)『[[ブレードランナー]]』 - 透明ビニールのレインコートを纏った女レプリカントが雨が降り続く街の場面に登場する。
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*[[芦名星]](結城翠役) 『[[ST 警視庁科学特捜班#ST 赤と白の捜査ファイル|ST 赤と白の捜査ファイル]]』 - 雨天時の捜査で露出の多い服の上に、透明ビニールのレインコートを着ている。小説版ふくめ女性キャラクターの心理を象徴。
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*[[波瑠]](比嘉ミカ役) 『[[BORDER (金城一紀)#テレビドラマ|BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係]]』 - 白衣ではなく、透明ビニールのレインコートのような手術着と白い長靴を着用。
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*[[島田一男]] 『赤い影の女』 春陽文庫 1962年 - 赤いビニールのレインコートの美女が絡むファッション業界の殺人事件。
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*[[横溝正史]] 『青い外套を着た女』(『サンデー毎日』1937年7月) - 青いレインコートが物語の謎の重要な鍵となる。横溝正史では「泥の中の女」も、目撃された女性の赤いレインコートが、捜査陣の重要な手がかりになる<ref>「横溝正史読本」 (1979年、角川文庫)</ref>。
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== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
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*今井泰博、西原彰一著『山の道具Q&A』[[山と溪谷社]] ISBN 4-635-04067-4
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== 関連項目 ==
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* [[雨具]]
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* [[合羽]]
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* [[レインウェア]]
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* [[外套|オーバーコート]]
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* [[ステンカラーコート]]
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* [[トレンチコート]]
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* [[ポンチョ]]
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2024年4月12日 (金) 17:50時点における版

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レインコートraincoat)とは、耐水性あるいは防水性のある素材でつくられた、主に雨天時に着る外套合羽(かっぱ)、雨合羽(あまがっぱ)ともいう。

丈の短いものはレインジャケットrain jacket)、トップスボトムスのセットはレインウェアと呼ばれる。

歴史

1823年スコットランドの化学者であるチャールズ・マッキントッシュゴムを使った防水布を発明。この布を使ったレインコートがロンドンで流行した。

1879年トーマス・バーバリーギャバジンを開発。

素材

日本産業規格(JIS)では耐水圧2,000mm以上で防水生地として扱われるが、衣服に使う場合はこれでは不十分なことが多い。例えば濡れた凹凸のある地面に座った場合、凸部分の水滴は、それ以上の圧力で衣服に押しつけられる可能性がある。そのため衣服に使用する防水生地の場合は耐水圧8,000mm以上が目安とされる[1]。また生地が防水であっても縫い目が目止めされていないと、そこから浸水する[1]

レインコートに使われる古典的な素材として、ゴム引きワックスドコットンEnglish版ポリ塩化ビニルなどがある。これらの素材で作られたレインコートは、水を通さないと同時に身体から出た水蒸気も通さない。そのため長時間着用していると、レインコート内部の行き場を失った水蒸気が冷やされ、水に戻り、インナーウェアが濡れることになる。

その他の古典的な素材にギャバジンがあるが、これは厳密には防水生地ではないため、それなりの水圧がかかると浸水する。

近年では「ゴアテックス」などの防水透湿性素材が使われる[2]。防水透湿とは水は通さず水蒸気は通すという意味で、その素材を大別すると無孔質と多孔質に分けられる。多孔質は水(100µm程度)は通れないが水蒸気(0.0004µm程度)は通れる極小の穴の空いた構造になっている。無孔質は親水性のあるポリマーが水蒸気と結合・分離する作用を利用して移動させる。それぞれ単体でも機能するが、両方を組み合わせたものもある。

ハードシェルジャケットとソフトシェルジャケット

防水性のある衣服にハードシェルジャケットhard shell jacket)がある。レインジャケットと似ているが、登山などのアウトドアスポーツにおいては、突然の雨など天候の変化で脱着するものはレインジャケット、天候に拘らず常時着用するものはハードシェルジャケットとして区別される傾向がある。

既存の防水生地は伸縮性を持たせるのが難しいなどの制約が多く、あまり高い柔軟性や透湿性も望めないため、衣服の素材としては使い勝手がよくなかった。そこで防水ではなく耐水に割り切って、より衣服に向いた素材を使って作られたものがソフトシェルジャケットsoft shell jacket)である。ウインドブレーカーなどはソフトシェルジャケットに分類される。

題材とした作品など

鮮やかな色で光沢の強いレインコートは、視覚的に観客に強い印象を残す効果を目的として、洋画では小道具(衣装)として使われることが多い[3]。主人公の個性・キャラクターを特徴付け、視聴者へのインパクトを期待して用いられるケースがあり、「刑事コロンボ」などは、その成功例ともいえる[4]。児童書では「ちいさいモモちゃん」「ワニくんのレインコート」シリーズなど、教育・知育の絵本で題材に取り上げられる場合がある。ミステリでは、重要人物のキーアイテムになる作品が書かれている[5]

  • マルレーヌ・ジョベール 『雨の訪問者』[6] - ヒロインが白エナメルのレインコート・レインハット・長靴の3点セットで登場。晴れのシーンでも多く着用。白い雨具は女主人公の「清楚」さを暗示[7]
  • ソフィア・ローレンアラベスク (映画)[8] - ヒロインが赤エナメルのレインコートを着用。スチール写真も多数現存。
  • カトリーヌ・ドヌーブ昼顔[9] - ドヌーブ演じるヒロインが黒エナメルのレインコートをロシア風の毛皮の帽子と合わせて着用。ドヌーブ作品では他に「シェルブールの雨傘」など。
  • ソフィー・マルソーラ・ブーム2』(La Boum 2)[10] - 作中劇「雨に唄えば」にマルソーが黄色いレインコート姿で出演。オリジナルの「雨に歌えば」のレインコートは舞台でも多用。
  • ダリル・ハンナ(レプリカント)『ブレードランナー』 - 透明ビニールのレインコートを纏った女レプリカントが雨が降り続く街の場面に登場する。
  • 芦名星(結城翠役) 『ST 赤と白の捜査ファイル』 - 雨天時の捜査で露出の多い服の上に、透明ビニールのレインコートを着ている。小説版ふくめ女性キャラクターの心理を象徴。
  • 波瑠(比嘉ミカ役) 『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』 - 白衣ではなく、透明ビニールのレインコートのような手術着と白い長靴を着用。
  • 島田一男 『赤い影の女』 春陽文庫 1962年 - 赤いビニールのレインコートの美女が絡むファッション業界の殺人事件。
  • 横溝正史 『青い外套を着た女』(『サンデー毎日』1937年7月) - 青いレインコートが物語の謎の重要な鍵となる。横溝正史では「泥の中の女」も、目撃された女性の赤いレインコートが、捜査陣の重要な手がかりになる[11]

脚注

  1. 1.0 1.1 『山の道具Q&A』pp.66-67。
  2. 1976年にアメリカの Early Winters 社のテントに採用されて以降、主にアウトドア用品、特にレインウェアなどを中心に多く採用されている。(1977年6月21日発行 Backpacker VOL.5 No.3)など
  3. 澁澤龍彦「スクリーンの夢魔」現代映画論 (1978年、河出書房新社)
  4. 「刑事コロンボ : レインコートの中のすべて」マーク・ダウィッドジアク 著 岩井田雅行、あずまゆか 訳(1999年、角川書店)
  5. Dean R. Koontz (著)、大出 健 (翻訳) 「ベストセラー小説の書き方」 (1978年、河出書房新社)
  6. 「雨の訪問者(1970年1月21日公開)」。原作・脚本はミステリ作家のセバスチアン・ジャプリゾ
  7. キネマ旬報」1970年5月24日「Le Passager de la pluie」1970
  8. アラベスク (映画)( 1966年5月5日公開)」。クロード・ルルーシュ監督のミステリ映画。
  9. 「昼顔(1967年5月24日公開)」。監督はルイス・ブニュエル、 原作ジョゼフ・ケッセル。
  10. ラ・ブーム2( 1982年12月公開)」。クロード・ピノトー監督の青春恋愛映画 。
  11. 「横溝正史読本」 (1979年、角川文庫)

参考文献

関連項目

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